僕がオタク街コンに行った話 その3
前回までのあらすじ
イシツブテがかわいい子の正面で浮かれてて死んでほしいと思った
おわり
中華屋を出てからは悲惨そのものだった。
最初に移動した喫茶店(プロント)はスイーツ大好きな雌豚共で溢れかえる養豚場の様相を醸し出しそこに雄猿も加わって入場すらできない有り様。
妥協して入った韓国料理屋は案の定全く人気がなく10分ほど待っていたが相手の穴が来なくて普通に街コンとして疑問を抱くレベルだった。運営死ね。
そもそもヤニで黄ばんだカーテンのような衣服に身を包んだイシツブテと行動を共にしている時点で最初から負け戦だったのかもしれないと嘆きつつ、店の候補もないので仕方なく目に入ったパスタ屋に入ることにした。
愛想のないスタッフに席に案内される途中に見えた体育会系のイケメンが首から下げている自己紹介カードに「好きなアニメはグレンラガンです」って書いてあってストレスから悶絶死しそうだったのもあり、悟りが開けそうだった。イケメンはウェイウェイ言って足軽じゃない尻軽女追いかけてればいいんだよ足の小指から溶けて死ね。
いざ実際案内されてみても俺らの席へ来たのは30越えてる素敵なレディー(笑)だったのだが若作りするよりもっとやることあるんじゃないですかねあはは。
ちなみに一人はデレマスをやってたので話し相手にはなったがここから発展させようなんて気持ちには微塵もならなかった。
正直この時には飽きてた。だってビビッと来た子いないんだもん。やだ! 小生やだ!
そして特に収穫はなく街コンは終わった。
適当に拍手をしてからイシツブテに別れを告げ、二時間弱耐え続けたニコチンの欲求を満たすためにいち早く喫煙所へ向かう。
念のため、とかダメ押し、というわけではないが、タバコを吸いながらLINEIDを聞きだしておいた女達にこれから暇かどうか連絡だけしておいた。
酔いと適度な寒さの中で吸うタバコは指先一本まで染み渡り、揺蕩う紫煙はオレが抱いた幻想のように夜空に紛れて消えていった。
「帰るか」
誰に言うでもなく、オレは来た時の記憶を辿り駅へ向かった。
なにが悪かったかなーイシツブテかなーヤニ焼けしたカーテン着たイシツブテかなーとか今回の反省をしつつ駅のホームに到着したオレが見たのは、二組目のかわいい女の子たちだった。
これは運命だと、確信した。
速攻で声をかけ、これから暇かどうかを聞いたが、どうやら帰らなければならないとのこと。
なかなかのらりくらりとこちらと意図を躱され、「ちょっとぐらい時間あるでしょ?」
と禁断のワードを使いそうになるもぐっとこらえる。
帰り道も逆なのでどうしたものか。電車もあと一分で来てしまう。
焦るばかりで、アルコールに浸された脳みそは決定的な答えを導き出してくれない。
とりあえず今後も連絡するね、と言ってお茶を濁そうと思いついた。連絡先交換を済ませておいて今更何を、と思うが当時のオレは焦っていたのだ。
適度に間が空いた会話の中、オレが口を開いた時だった。
「ねぇねぇこの帽子かわいくない?」
と、篭った声が右から聞こえた。
何事かと急いで右を向くと、何やら会場でちらりと見かけた記憶のあるオッサンがオレが必死に口説いているにも関わらず、自らの貧相な頭部を覆い隠す帽子を誇示するためだけに女の子に話しかけたのだ。
唖然とした。そして思い出した。
これは『オタク』街コンなのだと。
オッサンはどうやら自分のキャップに着けたピンバッジを自慢したいようで、オレたちの会話の中に割り込んできたようだった。
女の子がそれに応じている間に、電車は到着し、女の子たちはオレに手を振ってそのまま電車に乗り込んでいく。オレは手を振るだけで、それを止めることはできなかった。
もしかしたら、自分もあの子たちにはピンバッジおじさんと同じに見られているのではないかと、恐ろしくなったからだ。
項垂れながら乗り込んだ帰りの電車の中で、いろいろバラ撒いたLINEを確認してみるも返事はどれもなかった。
結論:イケメンと組んだほうが楽
おわり