序章 ノリで生きるとはこういうことだ
2017年末、とあるつぶやきがバズった。
内容は街コンに参加した女性が彼氏を掴みとるまでのサクセスストーリーなのだが、それ以上でもそれ以下でもなく、なんでバズったのかよくわからないがバズったのだ。
それをうっかり目にしてしまった自分は、思い出してしまった。
あの胸が高鳴るときめきを。
あの歯を食い縛った屈辱を。
あの涙を拭ったその別れを。
――――――そうだ、街コンに行こう。
数年前の雪辱を晴らすべく向かったのは秋葉原だ。
男性参加費9800円は正気の沙汰ではないが、後に色々ペイできると考えるのが一般的なのだろうか。
そんなことを考えながら、氷のように冷たいエレベーターのスイッチに指をかける。
駅からはそう遠くない場所のはずなのに、年末の寒風は遠慮なく体温を奪っていっていた。
マフラーを寄せた目の前でドアが開き、狭い筐体に身を滑り込ませると、自分と同じ戦地に向かうであろう男どももちらほらと乗り込んでくる。
ドアが閉まった後は、ただただ静寂が訪れる。
嵐の前の静けさとはよく言ったもので、これから巻き起こるどったんばったん大騒ぎをうぇるかむとぅーざじゃぱりぱーくしていたのは言うまでもない。
バカみたいなことを考えている間に、箱の中の重苦しい空気が解き放たれ、戦場への道が開かれる。
行きを整え、外へと踏み出した俺が見た景色は――――
「は~い! 女性の方から順番にご案内しますね~♪」
と、媚っ媚な声で制服コスプレに身を包んだ吉田沙保里の姿だった。
今回も荒れるんだな、と予感させるにしてもインパクトが強すぎやしませんか、神様。